robots.txt で AI クローラーを制御する - 検索・学習・エージェントを分けて許可する方法
要約: AI クローラーのせいで robots.txt に書くことが増えました。用途別のボット名と Google-Extended と Content-Signal を整理します。
概要
robots.txt は 1994 年のメーリングリストでの合意として始まり、2022 年になってようやく RFC 9309 として標準になったファイルです。
ルールは単純です。サイトのルートにテキストファイルを一つ置き、誰が(User-agent)どこを(Disallow / Allow)クロールしてよいかを書きます。
かつては問題がありませんでした。クローラーの目的が実質的に一つだったからです。検索インデックスを作り、代わりにリンクで人を送り返す。やり取りが成立していました。
AI クローラーはその交換を壊しました。同じように取っていくのに送り返しません。モデルの学習に使い、ユーザーが質問したその瞬間にリアルタイムで読んでいきます。この三つはサイトから見ればまったく別のことなのに、robots.txt にはそれを分けて書く欄がありませんでした。それで今、欄が増えつつあります。
この記事で扱うこと
- 従来の robots.txt が扱っていたことと、その構造的な限界
- AI によって増えた項目 — 用途ごとに分かれたボット、クローラーではないトークン、
Content-Signal - なぜ今になって気にする必要があるのか・サイトの性格ごとに何を開き何を塞ぐか
従来 robots.txt に書いていたこと
文法は実質四行がすべてです。
1User-agent: *
2Disallow: /admin/
3Disallow: /*?sort=
4Allow: /
5
6Sitemap: https://example.com/sitemap.xml
使い道はたいていこの四つのどれかでした。
- 見なくてよいパスを外す —
/admin/、ログイン後のページ、ステージングの複製 - クロールバジェットを節約する — ソートやフィルタのクエリパラメータのように、実質同じページが数百に膨らむ URL
- ボットごとに違う指示を出す —
User-agent: Googlebotのグループを別に書く形 - サイトマップの位置を知らせる —
Sitemap:は、クローラーがどこから見るべきかを伝える唯一の標準的な通り道です
ここで二つ、最初に押さえておく必要があります。
- 強制力がありません。robots.txt はファイアウォールではなくお願いです。守るかどうかはボットの選択です。 守らないボットには何も起きません。本当に塞ぐならサーバーや WAF で塞ぐ必要があります。
- Disallow はインデックス拒否ではありません。
むしろ逆に働く場合があります。クロールを塞ぐとクローラーがそのページの
noindexメタタグを読めなくなり、外部リンクだけを見て URL だけを検索結果に残すことがあります。 インデックスから外したいなら、クロールは開けておいてnoindexを読ませる必要があります。
そしてこの記事の核心である三つ目の限界。軸が二つしかありません。誰が、どこを。何に使うのかを書く場所がありません。
AI が生まれて増えた項目
① 一社がボットを複数走らせる
用途の欄がないので、各社が選んだ回り道は用途ごとにボット名を別に用意することでした。現在の主要各社は、おおむね学習 / 検索 / ユーザーのリアルタイム要求の三つに分けています。
- OpenAI —
GPTBot(学習)、OAI-SearchBot(検索インデックス)、ChatGPT-User(ユーザーがリンクについて尋ねた瞬間のリアルタイム訪問) - Anthropic —
ClaudeBot(学習)、Claude-SearchBot(検索)、Claude-User(ユーザー要求) - Perplexity —
PerplexityBot、Perplexity-User - Meta —
Meta-ExternalAgent - Common Crawl —
CCBot。これは特定のモデルの所有ではなく公開データセットです。そのデータセットを複数のモデルが学習に使います
おかげでこうした分岐が可能になりました。
1# 検索は歓迎、学習はお断り
2User-agent: OAI-SearchBot
3Allow: /
4
5User-agent: GPTBot
6Disallow: /
ただし構造的な限界はそのままです。これはブラックリストです。ボット名を自分ですべて把握していなければなりません。各社が新しいボットを一つ作れば、自分の robots.txt はその日から遅れます。名前を管理する仕事が終わりません。
② クローラーではない「トークン」が登場した
Google-Extended と Applebot-Extended はボット名ではありません。その名前で訪れるクローラーは存在しません。
Google を例に見ましょう。Google のクローラーは Googlebot 一つです。このボットが来てページを取っていきます。ところが取っていったデータは検索インデックスにも使われ、Gemini の学習にも使われます。
ここで問題が生じます。学習が嫌だからと Googlebot を塞ぐと、検索からも一緒に消えます。二つを分ける方法がありませんでした。
そこで Google が別に作ったのが Google-Extended です。クロールはそのままにして、「取っていったものを学習には使うな」だけを別に言うスイッチです。
1User-agent: Google-Extended
2Disallow: /
こう書いても Googlebot はいつも通り来ます。検索順位もそのままです。学習の側だけが外れます。
意味は小さくありません。robots.txt がアクセスではなく用途を制御した最初の事例です。ファイルの性格が「クロールするな」から「クロールは構わないが、その用途には使うな」へ移ったのです。
③ 用途を直接書く Content-Signal
ボット名を追いかける代わりに、いっそ用途の軸を文法にしてしまおうというのが、Cloudflare が 2025 年 9 月に出した Content Signals Policy です。
1User-agent: *
2Allow: /
3
4Content-Signal: search=yes, ai-input=yes, ai-train=no
値は三つです。
search— 検索インデックスを作り、リンクで人を送り返す用途ai-input— 回答を生成する時点でコンテンツを入力として入れる用途(RAG・グラウンディング)ai-train— モデルを学習・ファインチューニングする用途
それぞれ yes / no です。書かなければ「意思表示なし」です。許可でも禁止でもありません。
よい点は、ボット名を知らなくてよいことです。User-agent: * 一つに用途三行を書けば、新しく生まれたボットにもそのまま適用されます。逆にはっきりさせておくべき点は、これも依然として強制ではないということです。Content Signals は技術的な遮断ではなく意思表示です。robots.txt の中に人が読めるライセンス文言を一緒に入れ、「知らなかった」という言い訳を封じることが目的です。執行ではなく根拠です。
実際にどう使うかは、このブログの設定ですぐ後に見ていきます。
④ 標準化も進んでいる
IETF に AI Preferences(aipref)ワーキンググループができ、用途の語彙とそれを付ける方法を標準として整えています。まだ草案段階ですが、方向は Content-Signal と同じです。用途ごとの語彙を定め、robots.txt だけでなくHTTP レスポンスヘッダーでも付けられるようにすること。ヘッダーで付けられれば、ページ単位を超えて画像や PDF のような個別ファイルにも意思を示せます。
⑤ 混同しやすいもの — llms.txt は権限ファイルではない
一緒に言及されるものの、性格が違うファイルがあります。
llms.txt— 許可・遮断とはまったく関係ありません。LLM がサイトを理解しやすいように、主要ドキュメントの一覧をマークダウンで整理した案内文に近いものです。robots.txt の代替ではありませんai.txt— 学習データのオプトアウトを狙った別ファイル。採用率が低く、実質的にContent-Signalの側へ収束しつつある雰囲気です
⑥ そして robots.txt では塞げないもの — AI エージェント
ここが今いちばん曖昧な点です。
ブラウザを直接操作する AI エージェントはクローラーではありません。人が「このページを要約して」と指示して、人の代わりに一度入ってくる代理人です。robots.txt はそもそも自動クローラーのための規約なので、ユーザーが直接指示した単発のアクセスには原則として適用対象ではない、という解釈が優勢です。実際に ChatGPT-User や Claude-User といった名前が別にある理由がそれです。
さらに User-Agent 文字列はただの自己申告です。その気になれば普通のブラウザのふりができます。そのため Cloudflare は mixed-use クローラーに責任をという記事で二つを求めています。一つのクローラーが検索と学習を兼ねるとサイト側には分岐する方法がないので、目的別にボットを分け、UA 文字列の代わりに暗号学的な署名で身元を証明せよということ(Web Bot Auth)です。名前を信じる体制から、署名を検証する体制へ移ろうという話です。
それでなぜ気にする必要があるのか
従来の検索クローラーは実のところ大した問題ではありませんでした。Googlebot は定期的に立ち寄り、変わったものだけを取っていきます。代わりに検索結果で人を送ってくれます。負荷も大きくなく、返ってくるものもあるので、あえて塞ぐ理由がありませんでした。
AI クローラーは違います。学習用の収集はサイトを丸ごとさらうことが目的です。変わったものだけを見るのではなく、あるだけ取っていきます。一度訪れる規模が検索クローラーとは比較になりません。このブログだけ見ても、AI クローラー一社がリクエスト数で Googlebot の七倍を取っていきました。
それはタダではありません。
- 静的ブログなら帯域くらいです。動的サイトや API を抱えていればそのままサーバー負荷になります
- 検索と違って返ってくるものがありません。AI の回答に引用されても、リンクをたどって来る人は少ないです
- 学習に一度入った文章は取り消せません
とはいえ全部塞ぐことが答えではありません。サイトの性格によって答えが違います。
- 個人ブログ・技術文書 — 読まれることが目的です。検索はもちろん、AI の回答に引用される経路(
ai-input)まで塞ぐと損のほうが大きいです - ニュース・有料コンテンツ・創作物 — コンテンツ自体が商品です。
ai-trainは閉じるのが基本です - コマース・社内サービス — 学習価値は低く、負荷だけが残る場合が多いです。大量収集型から選んで塞ぐほうがよいです
結局 robots.txt は今や「開くか塞ぐか」ではなく「何のために開くか」を決めるファイルになりました。
このブログはこうしてある
個人の技術ブログなので三つとも開けてあります。読まれるために書く文章なので、学習まで塞ぐ理由はないと考えました。
1User-agent: *
2Allow: /
3
4Content-Signal: search=yes, ai-input=yes, ai-train=yes
5
6Sitemap: https://blog.plzhans.com/sitemap.xml
Allow: /— パス制限はかけていません。隠すもののないサイトですContent-Signal— 検索・AI 回答・学習の三つともyesSitemap:— 意外にもこれが負荷を減らします。クローラーがサイトをやみくもにさらう代わりに、一覧を見て必要なものだけ取っていくようになります。塞ぐことだけが方法ではありません
Hugo なら hugo.toml に enableRobotsTXT = true を入れ、layouts/robots.txt に上の内容を置けばビルド時に生成されます。sitemap.xml は Hugo が自動で作ります。
まとめ
- robots.txt はもともと、誰がどこをクロールしてよいかだけを書くファイルでした。今は、取っていったものをどこに使うかまで書く必要があります。
- ボット名を分けて塞ぐ方式はブラックリストなので終わりがありません。Content-Signal は search・ai-input・ai-train の三つに減らしました。
- 個人ブログなら search と ai-input は開けておくほうがよいです。悩むべきは ai-train 一つです。
- robots.txt は最後までお願いです。強制するにはサーバーで直接断ち切る必要があります。
Cloudflare を使っているなら、その仕事を機能として提供しています。
- CloudflareでAIボットをブロックする - Managed robots.txt と AI Crawl Control — Managed robots.txt · Block AI bots · AI Crawl Control
